問2 100mSv以下の低線量被ばくと健康被害の可能性については、どのようなモデルがありますか?

 

低線量被ばくと健康被害の確率モデルの詳細については、成書や他のサイトに記載されているので、ここでは、モデルの概念と論点のみ示す。現在の低線量被ばくであれば、何年か先の晩発性障害を除き、早期の健康被害は生じないと考えてよいのか。100mSv以下の低線量での健康被害についてどのようなモデルが適切とされるのか。一定のデータによる裏付けを持つ種々のモデルが、並立しているのが現状である。

 

低線量放射線被ばくによる健康被害については、しきい値を想定するモデルもあるが、ICRPの直線モデルに代表されるように、不明もしくは因果関係の検討不能な部分については、原点を通る直線が延長されると仮定して、集団での防護・リスク回避に利用している。一方では、100mSv以下のところまで直線の因果関係があるとする米国科学アカデミーのモデル、内部被曝も考慮し低線量域での影響リスクを高く想定するECRRの採る2相性モデルなどもある。このようにモデルの違いによる確率の大小は異なるが、100mSv以下の低線量域における健康影響(晩発性障害である発癌以外の障害、例えば血管病変や不定愁訴なども含む)については、可能性は否定できないと考えるのが妥当である。その点、低線量被ばくと健康をめぐる国内の論調の一部が、「100Sv以下では、交絡因子もあって放射線による健康被害は確認できない」と「100Sv以下では、放射線による健康被害は発生しない」の区別を曖昧にし、場合によっては意味をすり替えている点には、注意を払わねばならない。